中小製造業で需要予測AIを検討するときは、モデルを選ぶ前に何を、いつまで先に、何の判断のために予測するかを決めます。来週の材料発注と半年先の人員計画では、必要な粒度もデータも違います。受注済みの数量を集計する仕事と、まだ決まっていない需要を予測する仕事も分けてください。
予測は発注や生産計画の判断材料です。確定受注、在庫、入荷予定、生産能力を照らし合わせ、人が変更を確認して初めて実務に使えます。計画と実績をExcelで管理する場合は、生産計画表の作り方と見直しの目安も確認してください。
最初に決める3つのこと
| 決めること | 例 | 決めないまま始めると |
|---|---|---|
| 対象 | 主力製品5品目と、それに使う材料 | 全品目を同じ方法で予測してしまう |
| 期間と単位 | 週ごとの数量を4週先まで | 日次の細かな数字に一喜一憂する |
| 使い道 | 材料の発注前に、確定受注以外の見込みを確認 | 数字は出ても判断につながらない |
対象の決め方は、予測の単位や期間を先に定めるという予測研究の手順とも一致します。まずは欠品すると生産が止まる品目や、調達に時間がかかる品目など、判断に効く少数から始めます。
受注・出荷・在庫を同じ「需要」として混ぜない
過去の出荷数だけを並べると、欠品した日の需要を小さく見積もることがあります。たとえば30個の注文があり、在庫不足で20個だけ出荷した場合、出荷履歴の20個をそのまま「需要」とすると、残り10個の扱いが見えません。受注残になったのか、キャンセルされたのかを確認します。欠品による売上履歴の落ち込みは、Oracle の需要予測資料でも補正対象として扱われています。
最初に必要な記録は多くありません。
| 記録 | 確認すること |
|---|---|
| 品目コード・単位 | 製品名の変更や箱/個の混在がないか |
| 日付別の受注数・出荷数 | 確定受注と実際に出した数量を区別できるか |
| 欠品日・受注残・キャンセル | 出荷数が需要を表していない日を分けられるか |
| 在庫・入荷予定・生産予定 | 予測を発注に使うときに突き合わせられるか |
| 特売・大型案件・仕様変更 | 過去と条件が違う期間を説明できるか |
記録が数件しかない新製品や、たまにしか売れない品目では、統計的な傾向を無理に表示しない判断も必要です。予測の教科書は、過去の数値があり、その傾向が今後もある程度続くと考えられる場合に定量的な方法を使うと説明しています。履歴が乏しい場合は、確定受注と営業・現場の判断を分けて記録します。
AIを導入する前に、簡単な予測と比べる
はじめは「前週と同じ数量」「直近数週の平均」など、説明できる方法を基準にします。過去のデータを前半と後半に分け、その時点で分かっていた数字だけで後半を予測します。後から判明した受注や欠品を過去の予測に混ぜないことが大切です。時系列の検証方法でも、予測対象より後の観測値を学習に使わず評価します。
比較時は平均誤差だけでなく、欠品を招く過小予測、在庫が積み上がる過大予測を別々に数えます。簡単な方法と同程度なら、AIを入れる前に記録の欠けや品目マスタを直すほうが先かもしれません。急な大型受注や仕様変更は過去のパターンだけでは読み切れないため、現場が予測を修正した理由を残します。
予測を発注へつなぐ順番
- 確定受注と未確定の見込みを分け、品目ごとに予測対象期間の数量を確認する。
- 製品の数量を材料の所要量へ直し、手持ち在庫、発注済み、入荷予定日と突き合わせる。
- 発注点の計算と欠品対策を確認し、いつ不足するかを日付で見る。
- 発注数量・納期・最小ロットを担当者が確認して承認する。予測値だけで自動発注しない。
becon は需要・在庫の見通しを在庫や発注の判断と一緒に扱うサービスです。ただし、予測できる品目と精度は入力データや運用条件によって変わります。まず自社の受注・出荷・在庫の記録で何が分かるかを確認したい方は、無料の現場診断で現状を一緒に整理します。
